デュッセルドルフ近郊メーアブッシュで列車事故
概要は国内メディアでも既報の通り、旅客電車が貨物列車に追突し貨車が脱線、電車の先頭車は大破する事故が起こりました。
※追記:記事中には普通旅客列車とありますが、正しくはRegionalexpressつまり快速列車です。
現場はこのへん(Google マップ)です。南東にノイス中央駅、北西にメーアブッシュ・オスターアト駅があり、建物の少ない見通しの良い区間です。
幸いにも死者が出ませんでしたので、日本で続報が伝えられることはあまりないかと思いますが、FAZの記事を読むともう少し詳しい情報が出てきています。
この記事の後半によると、またしても事故原因は運転指令による無閉塞運転の指示による可能性が高そうです。
以前ホルツキルヒェンの事故の時もブログ記事を書きましたが、その際は単線区間で棒線駅を挟み、一方に運転指令(信号扱手)が代用手信号を現示して停止信号を越えさせたことが原因となりました。
今回は衝突の数分前にFreie Strecke、つまり停車場間で「機外停止」していたことも乗客の証言として出ているので、停止信号で一度停車→運転指令が無線で信号を越えるよう指示という流れを裏付けます。
ちなみに当該区間の前面展望です。
ノイスの旅客駅を出たあと、貨物ヤードがあってそこに信号扱所がありそうです。その出発信号は腕木式信号機で、次のオスターアト駅までの間の閉塞信号は色灯式信号機になっていますね。もちろん以前紹介した、H/V信号システムになっています。
ホルツキルヒェンの事故の時は、ドイツの鉄道って代用手信号の癖に全速で走るのかよと思ったものですが、そのときは途中に棒線駅があったから徐行を失念したものとも思っていました。
しかし、今回の事故があって改めて、最近ドイツの鉄道では意図的な無閉塞運転が横行しているのではないかという疑いを個人的に強く抱いています。
H/Vシステムはその性格上閉塞間隔が長くならざるを得ず、日本のような多頻度運行には向いていません。にも関わらず近年電車化で運転頻度を上げている都市近郊の路線で、立て続けに事故が起こってしまいました。
ドイツでは日本よりかなり多くの貨物列車が走っています。そして貨物列車は古今東西よく遅れます。貨物列車の遅れを旅客列車に波及させないため、先行列車が進行して一定間隔があけば続行運転を許可してしまえば、運転間隔を詰められますが安全を担保するものは運転士の目だけになってしまいます。
今回の事故では運転士は先行列車に気づいて非常ブレーキを扱い、その結果死者が出ることだけは避けられました。また日本の電車より衝突安全性の高い新型電車だったことも功を奏したでしょう。
日本では無閉塞運転に纏わる事故が以前多発したため、必ず指令員の許可のもと実施するように規定が改められています。
しかしドイツでは指令員が率先して規則を破っているのではないかと思われる現状。これではいくら高度な装置や高性能電車を投入しても事故が起こります。
背景として思い当たるのが、どちらの事故も民営の旅客運行事業者が運行する列車が関わっている点で、一方指令員はドイツ鉄道の職員であると思われることです。
上下分離で運行管理と列車が別会社になった結果、指令員には旅客列車を定時で通すようにという強いプレッシャーがかけられているのではないでしょうか?
ホルツキルヒェンの事故は運転指令が逮捕され、個人的責任を追及されるだけの結果になりましたが、今度こそこうしたシステム全体の問題に目が向けられるべきではないかと思います。
暫くドイツで先頭車両には怖くて乗れませんね。くわばらくわばら。