ドイツかぶれの徒然

英語が嫌いで気づいたらこうなっていた。思い出したように更新するただの生存報告になりつつある

ドイツより生存報告

ライプツィヒ駅広すぎやねん!(=S-Bahnに乗り損ねた)

ので、暇になったので少し更新。

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建物の前まで行ってみちゃった(てへ

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ICで乗ったかなりレア感ある車両。偶然だったので血中の鉄分濃度が急上昇しました。

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東ドイツな大規模農場の菜の花畑。ドイツは今花の季節で、牧草地にはタンポポシロツメクサ、そして紫の花(種類はよくわからない)が咲き、ほかにも桜やアカシアの花も盛りです。

未加工画像につき見にくいかもしれませんが、とりあえずこれで。

 

夜に追記:また事故ってるんですか? そしてまた運転指令が逮捕されたとのこと。ほんと、どうなってるのドイツの鉄道。今回も一度交換駅変更でちょっともたついてた場面に遭遇しましたが、そういうの日常茶飯事なんだろうなぁ。

でも今回は信号を誤ったというより、進路構成のミスかあるいは機械的な不転換の可能性もあるように見える。また落ち着いたら詳しく調べてみます。(このへんの記述も後で訂正・削除するかも)

また今回の事故を取り上げた記事の中に、以前取り上げたバート・アイプリングの事故原因は運転指令が携帯を「遊びながら」仕事をしていたためという記述がありました。恐ろしすぎる!

 

5/21更に追記:暫く報道など見てみましたが、単純にポイントを切り替えミスしたまま進行信号を出してしまった人為的ミスのようです。事故現場となったアイヒャッハ駅の転轍装置は昔ながらのテコとワイヤーで構成されているもので、信号機も腕木式、軌道回路などの在線検知装置と連動した安全装置はなかった様子(停止信号の冒進を阻止するシステムPZBはあった)。旧式化したシステムと信号手のワンオペが招いた事故ということのようです。なお、逮捕された信号手はその日の内に一度釈放されたようです。

デュッセルドルフ近郊メーアブッシュで列車事故

概要は国内メディアでも既報の通り、旅客電車が貨物列車に追突し貨車が脱線、電車の先頭車は大破する事故が起こりました。

www.sankei.com

※追記:記事中には普通旅客列車とありますが、正しくはRegionalexpressつまり快速列車です。

現場はこのへん(Google マップ)です。南東にノイス中央駅、北西にメーアブッシュ・オスターアト駅があり、建物の少ない見通しの良い区間です。

幸いにも死者が出ませんでしたので、日本で続報が伝えられることはあまりないかと思いますが、FAZの記事を読むともう少し詳しい情報が出てきています。

www.faz.net

この記事の後半によると、またしても事故原因は運転指令による無閉塞運転の指示による可能性が高そうです。

以前ホルツキルヒェンの事故の時もブログ記事を書きましたが、その際は単線区間棒線駅を挟み、一方に運転指令(信号扱手)が代用手信号を現示して停止信号を越えさせたことが原因となりました。

今回は衝突の数分前にFreie Strecke、つまり停車場間で「機外停止」していたことも乗客の証言として出ているので、停止信号で一度停車→運転指令が無線で信号を越えるよう指示という流れを裏付けます。

ちなみに当該区間の前面展望です。

www.youtube.com

ノイスの旅客駅を出たあと、貨物ヤードがあってそこに信号扱所がありそうです。その出発信号は腕木式信号機で、次のオスターアト駅までの間の閉塞信号は色灯式信号機になっていますね。もちろん以前紹介した、H/V信号システムになっています。

ホルツキルヒェンの事故の時は、ドイツの鉄道って代用手信号の癖に全速で走るのかよと思ったものですが、そのときは途中に棒線駅があったから徐行を失念したものとも思っていました。

しかし、今回の事故があって改めて、最近ドイツの鉄道では意図的な無閉塞運転が横行しているのではないかという疑いを個人的に強く抱いています。

H/Vシステムはその性格上閉塞間隔が長くならざるを得ず、日本のような多頻度運行には向いていません。にも関わらず近年電車化で運転頻度を上げている都市近郊の路線で、立て続けに事故が起こってしまいました。

ドイツでは日本よりかなり多くの貨物列車が走っています。そして貨物列車は古今東西よく遅れます。貨物列車の遅れを旅客列車に波及させないため、先行列車が進行して一定間隔があけば続行運転を許可してしまえば、運転間隔を詰められますが安全を担保するものは運転士の目だけになってしまいます。

今回の事故では運転士は先行列車に気づいて非常ブレーキを扱い、その結果死者が出ることだけは避けられました。また日本の電車より衝突安全性の高い新型電車だったことも功を奏したでしょう。

日本では無閉塞運転に纏わる事故が以前多発したため、必ず指令員の許可のもと実施するように規定が改められています。

無閉塞運転 - Wikipedia

しかしドイツでは指令員が率先して規則を破っているのではないかと思われる現状。これではいくら高度な装置や高性能電車を投入しても事故が起こります。

背景として思い当たるのが、どちらの事故も民営の旅客運行事業者が運行する列車が関わっている点で、一方指令員はドイツ鉄道の職員であると思われることです。

上下分離で運行管理と列車が別会社になった結果、指令員には旅客列車を定時で通すようにという強いプレッシャーがかけられているのではないでしょうか?

ホルツキルヒェンの事故は運転指令が逮捕され、個人的責任を追及されるだけの結果になりましたが、今度こそこうしたシステム全体の問題に目が向けられるべきではないかと思います。

 

暫くドイツで先頭車両には怖くて乗れませんね。くわばらくわばら。

阪急新1000系列

気がつけばどんどん増えてきましたね。並びを見たり1000系同士、1300系同士の追い抜きがあったりも珍しくなくなってきました。実は全く予定せずに1000Fの営業運転日の一番列車に乗っていたりします。

個人的には9000系列より好きな車両です。というのも扉脇の手すりが逆手でも掴めるようになったから。乗り心地も妙にぐいっと引っ張られるような感覚がなくなっているように思います。停車時も回生失効のときの衝動がないですし。

2300系や3000系が本線系統から引退して、ミンデンドイツ式の乗りやすい揺れを体験できなくなったのは残念ですが、時が止まったようだった阪急もちゃんと時間が動いているようでありがたくもあり寂しくもあり。

ただ7000系も改装を受けてこのまま扉前につり革のある車両が主になっていくと思うと、より混雑時の扉付近への集中が加速してしまうなぁという気がします。

まぁ、淡路の工事も完了すれば途中駅で乗降が交錯するのもましになるのでしょうし、そこまで見据えてるのかもしれませんが。

あと10年たったところで新生淡路駅、できてるのかなぁ・・・

言葉の指し示す範囲のズレ

画像もないダラダラ雑記です。

しばらくやっていたTrainFever Wikiの客貨車リペイントリスト作りが火曜だったかに終わりまして……ちょっと逃避したくなったので40件弱分を缶ビール片手に一気にやった後寝て起きて更新したんですが。

その裏話というにはTFの話題から離れるかなと思って脱線しながらこっちで。

 

リスト作りで翻訳をしていて、全く日本語になっていない概念や単語にぶち当たるということは滅多にないので(Gummiringfeder-antriebとか未だに文系には手に余るんで翻訳できてないけど)、むしろ辞書や翻訳サイトで引っかからない時も日本語でなんというのかということを調べるほうがメインです。とりあえず自分で訳しておいて後から修正することもありますし。

そんな中で、日本語とドイツ語とついでに英語で同じ意味のようで違う意味を持つ、咬み合わない訳語に時々出会うので思いつく範囲で……

 

1.Triebwagen ≠ Multiple-unit ≒ 動力分散方式

Triebwagenを直訳すると動力車になります。なので本来的にはモーターやエンジンなお動力を持っていて、かつ客室ないし荷物室を持つものがTriebwagenです。モハとかキユニとかですね。ちなみに付随車はBeiwagen、制御車はSteuerwagenと言います。そして固定編成の電車はTriebzugと呼んでいるっぽいんですよね。

ところがTF.netでもそうなのですが、他の場面でもTriebwagenという言葉でいわゆる電車や気動車の編成一式や、そこに含まれる付随車や制御車を併せて扱っていることが見受けられるように思います。

一方で英語のMultiple-unitは総括制御、二両以上の動力車を片方から遠隔制御するシステムのことを差すわけで、これだと単行の電車は含まないんでしょうね。こっちのほうが動力分散方式という語には適する気がします。

逆に日本語で単行の電車や気動車を差して動力分散だと主張することのほうが無理があるのかも。

 

2.Wendezug = Pendelzug = Push-pull train ≒ プッシュプル列車

日本の鉄界でも割とペンデルツークという言葉は広まっている気がしますが、実はこれはスイスでの言い方でドイツだとWendezugだったりします。

機関車が後押しして推進運転し、制御客車が先頭に立つのが一般的なスタイルだとは思いますが、スイスだと機関車ではなく電車がついていたりとか、しかも事実上の固定編成だったりとかするのでもうTriebzugとの区別をどこでつけていいのやらという感じ。

さらに両端が機関車というスタイルのものもあります。TGVとかICE 1がこれですが、あまりWendezugと呼ばれている感じではない。固定編成だと定義から外れるのかな? さらに最近は機関車が中間に入って前後とも制御客車なんていう列車もあるのですがこれもWendezugなんですかね?

そして日本語のプッシュプルは、日本での推進運転の例が少ないこともあってか両端が動力車のものだけを指していることがあるよう。片側だけが動力車という時は、まんまペンデルツークと呼んでいる事が多いかもです。

 

3. Abteilwagen = コンパートメント車 ≠ Compartment coach

これはおやっと思ったものですが、英語のCompartment coachは通路がなくて扉が沢山ある、シャーロック・ホームズダウントン・アビーに出てくるスタイルのものだけを指すらしいんです。ホグワーツ急行で使っているようなのは(Side) Corridor coachなんだそうで。でもドイツ語でも日本語でもこの二者は特に区別してませんし(区別する必要があればどちらも「通路付き」的な言い方をします)、日本語は英語由来の単語のくせに英語よりドイツ語の語意に近いという現象が起こっています。

これに関連して困るのはGroßraumwagenのほうです。こっちのほうが日本では当たり前すぎて、区別する語が必要とされていないんですよね。一応、開放客室という言葉を見つけたので使っていますが。

 

この間ゴミ箱に「カン・ビン」しかなかったのでペットボトルはどこに捨てようという場面で、「ドイツ語だったらどっちもFlascheなんだしー」と言ったことがありますが、これは日本語では瓶をガラスという意味を含んで使っているのが悪い。どうにも、同じ言葉を使っていながら言葉の意味が変遷していくというか、下手をすると話し手と聞き手で違う意味に取ったりしているから、日本語ってめんどくさい。

そして往々にして正しい日本語とか主張する人ほど、自分たちの都合の良いように言葉を曲解するのが好きなんですよね。

ドイツの鉄道信号について(3・終)

3-1. 機械式信号機

鉄道信号機としては初期に開発されたもので、日本ではもう風前の灯しびですがドイツでは割と残っているのは前々回言及したとおり。

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(Hauptsignal – Wikipedia)

左が停止Halt!、真ん中が進行Fahrtです。では右は?

これはゆっくりしていってね緩速進行Langsamfahrtですが、これを日本の注意現示と混同するべきではありません。なぜならH/V信号の場合(Hl,Ksは異なる)、この現示は分岐の手前にある信号機で、分岐側が開通している場合のみに現示されるからです。

もともとプロイセン邦有鉄道の信号機を元にしている国営鉄道の信号機ですが、Eisenbahn-Signalordnung von 1907という個人サイトに載っているプロイセン時代の信号ルールだと二腕の信号機のどちらも斜め上に上がっているのは「分岐側に進行」という意味になっています。なお三腕だと「違う分岐側に進行」……三線以上に分かれる時に制限速度の低い方を表すのかな? 夜間灯火が全部緑色なのも興味深いですね。現在は二腕で下の腕木が上がっているときは黄色灯火です。

日本だと分岐の手前には分岐元×分岐先の数だけ信号機が並べられているのが基本ですが、ドイツだと分岐元の数だけです。それに加えて分岐先の速度を示しているように見えるのでスピードシグナルのように見えますが、元々制限は示していません。プロイセン時代の二本目の腕は進路表示器のようなものだといえます。

では現在はどうなのか? というと緩速進行現示だけなら40km/h制限がかかります。が、前回紹介した速度指示器が付属している場合そちらの現示が優先です。日本では60km/hの速度制限標識と45km/hの注意現示があったら45km/hで運転ですが、ドイツでは速度指示器が8を現示しているなら80km/hで、16を現示していれば160km/hで分岐器を通過します(そんなにいい分岐器はめったにないだろうけど)。

ですから言い換えるなら、緩速進行現示は分岐側へ進行できるという進路のみを意味しており、その制限速度は速度指示器に指示されているものに従う、標準的な40km/h制限の場合は速度指示器の設置を省略可、となると思います。故に、H/V信号システムはルートシグナルであると私は考えています。

前置信号機も見てみましょう。

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(Vorsignal – Wikipedia)

それぞれ、停止予期Halt erwarten、進行予期Fahrt erwarten、緩速進行予期Langsamfahrt erwartenです。

主信号機ともども、分岐がないところに設置されるものは緩速進行の現示をする必要がないので、主信号機は一腕のものを、前置信号機は円形板のみのものを設置することになっています。しかし分岐しないところの機械式信号機は早々に姿を消したと思われるので、ドイツの腕木式信号機といえば腕二つ、というのは向こうの鉄界隈でも強いイメージのようですね。

3-2. 色灯式信号機

1935年に最初の形の色灯式信号機は制式化されたようですが、普及は戦後を待つ必要がありました。

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(H/V-Signalsystem – Wikipedia)

上段の大きい四角のほうが主信号機です。駅周辺の信号機には併置されている入換標識が下にひっついています。

一番左は全点灯、左から停止、進行、緩速進行、入換許可です。左上の赤は何に使うんだろう?

ちなみ分岐のない閉塞信号機の場合は同じ大きさの背板に左下に赤・右下に緑の二つの灯火だけがある信号機を使ったようです。

さて駅周辺の信号には必ずと言っていいほど入換標識があるのだから、一つの機械にまとめてしまえというのが下段です。他にも停止信号が横二つ並びになり、腕木式信号機と同じようになっている上どちらかが破損しても大丈夫になっているのが特徴ですね。

このスタイルは50年代後期には登場していたようですが、後に緑色と黄色の灯火が左端にずれた形のものが69年規格製造形式Einheitsbauform 69として登場しました。

さらにコンパクト信号Kompaktsignalというスタイルのものもあり、現在更新中っぽいです。それがこち

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(H/V-Signalsystem – Wikipedia)

左は主信号と代用信号、中央は主信号と入換標識と代用信号が一つの背板に収まっています。右は前置中継信号機Vorsignalwiederholerで、左上の白灯を消せば前置信号機になります。どうやら主信号機に対して中継信号機を設けるという習慣はないようですね。

(2017.6.29追記:Vorsignalの中継器というネーミングではありますが、日本における主信号に対する中継信号機と同様の役割のようです)

 

これでH/V信号システムについて一通りのことは書いたかと思います。ようつべで前面展望を見るときにでも参考にしていただけたらいいかと。もちろん、TFやその他ゲームや模型でのシーナリーづくりにも。

とは言えH/Vは古いシステムで現在は主要路線からより高機能な(とはいえ、やっと日本の3灯式信号に追いついただけとも言える)Ksシステムに変更されつつありますし、写真には出ていた東ドイツのHlやベルリン・ハンブルクSバーンのSvシステムも使われています。これらとか、スイスやオーストリアの信号とか、あるいは標識類とか、需要とやる気があればまた書くかもしれません。

では今シリーズはここまでで。質問やツッコミお待ちしております。

ドイツの鉄道信号について(2)

 

2-1. 入換標識と車両停止標識

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写真はまたしてもコブレンツです。いちおう展示スペースから撮影してますが、完全に現役線とつながっている……

前回目立っていた「W」形の標識と黒い四角に円盤の入った信号?が写っています。別にしゃがんで撮っているわけではないので、かなり高いところに設置されているのが解ります。

どちらも入換作業で使われる標識で、W形のほうは車両停止標識Wartezeichenで、四角い方は機械式の入換標識Schutzsignal(Sperrsignal? どっちが正式なのかな)です。この二者はTFのMODでも一揃いで出ていますね。車両停止標識のほうは見たまま停止位置を表示しているだけなので、入換標識について主に見ていきます。

入換信号機と入換標識の日本での違いはぐぐるなりうぃきるなりしてもらうとして、入換信号機と訳さなかったのにはそのもの入換信号機Rangiersignalというものが別に存在したためです。

色灯式のものも併せて現示を見ていきましょう。

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停止・進入禁止

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停止

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進入禁止相殺

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入換走行を許可

 (ドイツ語版Wikipediaより転載)

両者で少し意味合いが異なります。恐らく機械式のほうは現場の担当者がすぐに現示を切り替えられるのに対して、色灯式のほうは遠隔操作されるからとかそういう理由だと思います。何れにせよ、進行せよという指示ではありません。そこが入換信号機ではないとする根拠でもあります。

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こちらはニュルンベルクで展示されている信号たち。一番左端が色灯式の入換標識の小人信号Zwergsignalです。

左から二番目はSバーンで用いられるSv信号、真ん中のものがH/V信号の色灯式信号機、その右は不明(追記:どうやらバイエルン時代の信号機です)、その手前は前回解説した機械式前置信号機で、一番右は主信号機それも三腕のものです。

2-2. 代用信号

写真の真ん中の色灯式信号機には一つの柱にいろいろついています。一番上の四角い背板に四つの灯火がついているのが主信号機、下の菱型っぽい八角形に四つの灯火がついているのが前置信号機です。そして真ん中は、事故の記事でも登場した代用信号Ersatzsignalです。

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(ドイツ語版Wikipediaより転載)

手信号代用機と同じようなものと紹介しましたが、本当に一緒といえるかはよくわかっていません。意味は主信号が停止信号を現示しているか、故障して何も表示していない場合にこの信号がついていれば通過できるということなので、使い方は手信号代用機と同じだと思っています。

色灯式のものしかないのも、多分機械式の時代には駅員が直接手信号を出していたからだと思います。なお現在は腕木式信号機に対してもこの代用信号だけ色灯式のものをつけているという例も多いようです。

2-3. 速度指示器

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ニュルンベルクの信号機たちその二。手前はH/V色灯式信号機の主信号に入換標識が一体化したもの、二番目は東ドイツで制定されたHl信号、奥は統一後の幹線で広まっているKs信号……だと思います。真っ黒でよく見えないけど。

H/Vの上には四角い箱状のものが乗っていて、Ksの上には三角形の板に「3」と書いてあります。これが速度指示器Geschwindigkeitsanzeigerです。

器って言っても板のほうはただの制限速度標識と変わらないんですが、箱状のものはLEDの灯列で数字が表示されます。こういうのも灯列式信号っていうんですかね?

数字はkm/hの10分の一で、3なら30km/hを意味します。20とか表示されることもあります。もしこれが先の線路状況の色んな要素を含めて表示されるなら完全にスピードシグナルなのですが、H/V信号との組み合わせの時は分岐器の速度制限を表示しているだけなので結局進路によって表示が変わる速度制限標識です。

前置信号機とともに設置される速度指示予告器Geschwindigkeitsvoranzeigerもあり、板のものは白い部分が黄色くなり形状も下向きの三角形に、灯列式のものはLEDが黄色になっています。これは色灯式信号機に対しては前置信号機の下に取り付けられます。機械式信号機に対しては速度指示器も予告器も信号機の下につくようです。というか上にはつけられないよね。

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キールからハンブルクに戻る間に車窓から撮ったもので、H/V信号の色灯式「コンパクト」信号機です。一番上に速度指示器が乗っています。

 

これでH/V信号機と一体化して設置されている信号や標識は一通り説明できたかと思います。次回は主信号機の年代別の種類(とはいえ写真でだいたい登場しましたが)と、現示の見方を説明したいと思います。

ドイツの鉄道信号について(1)

 

今回から多分三回シリーズでドイツの鉄道信号について書いていこうと思います。前々回書いた事故の話とはあまり関係ありません。まぁ一応つながりは出ますが。
もともとTF-Wikiのほうでドイツの鉄道信号について解説してくれと頼まれたのがきっかけではありますが、前から謎に思っていたので調べて書こうとしたら到底ゲームと関係ない話になりそうだったのでこのブログを作りました。
ただし全体像はあまりにも膨大になりすぎるので、やっぱりTFのMODに関わる部分について書いていくと思います。
日本語での先行情報は個人掲示板の過去ログか、個人ブログ一件に少しあったくらいしか見つけられていません。それどころかわからなくて困っている人の書き込みを幾つかみつけたので、多分ネット上で日本語では初めての内容になるんじゃないかな……と思っています。
基本的に日本の鉄道信号については知識が有ることが前提、写真やイラストは特記無き場合著者撮影・作成、自分で翻訳した単語は最初に原語を続けて書きます。

1.H/V信号システム

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写真はニュルンベルクのDB-Museumの別館前に展示されている機械式信号機Formsignaleです。奥にある背の高い方はいわゆる腕木式信号機で、出発・場内・閉塞といった防護区間を持つ主信号機Hauptsignalに使われます。これが停止現示なら列車は停止、進行現示なら列車は進行するのは万国共通ですね。なぜ腕木が二本あるのか? とかは後回しです。

注目して欲しいのはその手前にある背の低い(とはいえ、かなり巨大です)円形版の信号機。これがドイツ語圏の鉄道信号の特徴となる前置信号機Vorsignalです。HauptsignalとVorsignalが一対となって設置されることによって構成される信号システム、これをH/V信号システムH/V-Signalsystemと呼びます。1924年から使われ始めた、ドイツの鉄道信号を語る上で基本となるシステムです。

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(ドイツ語版Wikipediaより転載)
上図はこの二者が実際はどう配置されるかを示しています。列車は左から進行し、緑色の部分は通常のブレーキ距離、橙色の部分の余裕を加味して、例えば160km/hで走行する路線の場合は主信号機の1km手前に前置信号機が置かれるようです。

日本より高速運転で先んじていたドイツでは、信号の視認距離に入ってからブレーキを掛けても停止できなくなるという問題にも先にぶちあたりました。日本では同時期に600m条項を作って最高速度を抑えるという手段に出ましたが、H/V信号システムでは主信号機の現示を前置信号機が予告することにより、前置信号機の視認距離からブレーキをかければ主信号機の手前で停止できるという仕組みになっています。

ただしこれでは閉塞間隔を1kmやそれ以上にせねばならず、列車本数を増やしたかった日本とドイツとの鉄道事情の違いが際立っているとも言えます。

さて前置信号機などという訳語をひねり出したのはこれが日本のどの信号とも違う使い方をするからですが、非自動閉塞区間には存在する遠方信号機と通過信号機には似た点があるので、少し比較してみましょう。

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遠方信号機の場所には前置信号機だけ、場内信号機と通過信号機の場所には主信号機と前置信号機、出発信号機の場所には主信号機だけが設置されています。とはいえ、最初の前置信号機は日本の遠方信号機よりもかなり手前にあるはずです。また主信号機間の距離が先に示したブレーキ距離を下回っているような場合には、前置信号機はひとつ前の主信号機と一緒に建植されます。この場合別に速度制限をかけるんでしょうか。

日本の遠方信号機は場内信号機の現示を予告し、通過信号機は出発信号機の現示を予告しています。ドイツの前置信号機はどちらの役目も果たしています。遠方信号機が注意現示のときは場内信号機までの間に速度制限がかかるといった違いもあります。

このように、前置信号機は日本の遠方信号機より幅広い範囲で用いられ、場内と出発以外の閉塞信号機に対しても設置されていますし、もちろん自動閉塞の区間でも用いられています。

逆に日本の遠方信号機のことをドイツ語版のWikipediaではVorsignalとして紹介しているのですが、これは両者ともに含む概念である英語のdistant signalを経由して訳されたために起きた現象であり、同一視するべきではないと考えています。

ところで日本では場内停止、出発進行の場合通過信号機は注意現示ですけど、ドイツではどうなんでしょうね。前置信号機はあくまで主信号機の現示に連動するだけなので、場内停止で前置は進行予告という組み合わせもあるんじゃないかと思うんですが、確証はないです。

ちなみに見ての通りドイツの腕木式信号機は進行現示の時斜め上に腕木が上がり、日本とは逆になります。このほうが機構が壊れた際に自動で停止が現示されフェイルセーフです。日本のものも一応レンズ部分がカウンターウェイトになっていて自動で停止現示になるようになっています。

 

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写真は現役の腕木式信号機の様子。コブレンツのDB-Museumの敷地内から撮影です。この博物館、現役線までの間に柵も仕切りもなにもないんですよ。子供とか目を離してて大丈夫なのかな。

ドイツでは駅構内を中心に腕木式信号機が結構残っていて、別に更新する金がないわけではないと思うので(メンテナンスコストはむしろかかりますし)、恐らく絶対信号機と自動信号機を明示的に区別するためや、入換作業や駅テコ扱いなどの際に逆側からでも信号の現示を確認できるといった利点を重視して残されているんだと思います。

もちろんH/V信号システムは現役のシステムなので、色灯式信号機もあります。というかそれが本題なのですが、その前にこの写真でもやたら存在感のある「W」形の標識など、その他の信号や標識の話を次回はしていきたいと思います。

 

3/4 比較画像を修正(日本のまで右に腕木をつけてしまっていた……)