ドイツかぶれの徒然

英語が嫌いで気づいたらこうなっていた。思い出したように更新するただの生存報告になりつつある

ドイツの鉄道信号について(3・終)

3-1. 機械式信号機

鉄道信号機としては初期に開発されたもので、日本ではもう風前の灯しびですがドイツでは割と残っているのは前々回言及したとおり。

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(Hauptsignal – Wikipedia)

左が停止Halt!、真ん中が進行Fahrtです。では右は?

これはゆっくりしていってね緩速進行Langsamfahrtですが、これを日本の注意現示と混同するべきではありません。なぜならH/V信号の場合(Hl,Ksは異なる)、この現示は分岐の手前にある信号機で、分岐側が開通している場合のみに現示されるからです。

もともとプロイセン邦有鉄道の信号機を元にしている国営鉄道の信号機ですが、Eisenbahn-Signalordnung von 1907という個人サイトに載っているプロイセン時代の信号ルールだと二腕の信号機のどちらも斜め上に上がっているのは「分岐側に進行」という意味になっています。なお三腕だと「違う分岐側に進行」……三線以上に分かれる時に制限速度の低い方を表すのかな? 夜間灯火が全部緑色なのも興味深いですね。現在は二腕で下の腕木が上がっているときは黄色灯火です。

日本だと分岐の手前には分岐元×分岐先の数だけ信号機が並べられているのが基本ですが、ドイツだと分岐元の数だけです。それに加えて分岐先の速度を示しているように見えるのでスピードシグナルのように見えますが、元々制限は示していません。プロイセン時代の二本目の腕は進路表示器のようなものだといえます。

では現在はどうなのか? というと緩速進行現示だけなら40km/h制限がかかります。が、前回紹介した速度指示器が付属している場合そちらの現示が優先です。日本では60km/hの速度制限標識と45km/hの注意現示があったら45km/hで運転ですが、ドイツでは速度指示器が8を現示しているなら80km/hで、16を現示していれば160km/hで分岐器を通過します(そんなにいい分岐器はめったにないだろうけど)。

ですから言い換えるなら、緩速進行現示は分岐側へ進行できるという進路のみを意味しており、その制限速度は速度指示器に指示されているものに従う、標準的な40km/h制限の場合は速度指示器の設置を省略可、となると思います。故に、H/V信号システムはルートシグナルであると私は考えています。

前置信号機も見てみましょう。

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(Vorsignal – Wikipedia)

それぞれ、停止予期Halt erwarten、進行予期Fahrt erwarten、緩速進行予期Langsamfahrt erwartenです。

主信号機ともども、分岐がないところに設置されるものは緩速進行の現示をする必要がないので、主信号機は一腕のものを、前置信号機は円形板のみのものを設置することになっています。しかし分岐しないところの機械式信号機は早々に姿を消したと思われるので、ドイツの腕木式信号機といえば腕二つ、というのは向こうの鉄界隈でも強いイメージのようですね。

3-2. 色灯式信号機

1935年に最初の形の色灯式信号機は制式化されたようですが、普及は戦後を待つ必要がありました。

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(H/V-Signalsystem – Wikipedia)

上段の大きい四角のほうが主信号機です。駅周辺の信号機には併置されている入換標識が下にひっついています。

一番左は全点灯、左から停止、進行、緩速進行、入換許可です。左上の赤は何に使うんだろう?

ちなみ分岐のない閉塞信号機の場合は同じ大きさの背板に左下に赤・右下に緑の二つの灯火だけがある信号機を使ったようです。

さて駅周辺の信号には必ずと言っていいほど入換標識があるのだから、一つの機械にまとめてしまえというのが下段です。他にも停止信号が横二つ並びになり、腕木式信号機と同じようになっている上どちらかが破損しても大丈夫になっているのが特徴ですね。

このスタイルは50年代後期には登場していたようですが、後に緑色と黄色の灯火が左端にずれた形のものが69年規格製造形式Einheitsbauform 69として登場しました。

さらにコンパクト信号Kompaktsignalというスタイルのものもあり、現在更新中っぽいです。それがこち

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(H/V-Signalsystem – Wikipedia)

左は主信号と代用信号、中央は主信号と入換標識と代用信号が一つの背板に収まっています。右は前置中継信号機Vorsignalwiederholerで、左上の白灯を消せば前置信号機になります。どうやら主信号機に対して中継信号機を設けるという習慣はないようですね。

(2017.6.29追記:Vorsignalの中継器というネーミングではありますが、日本における主信号に対する中継信号機と同様の役割のようです)

 

これでH/V信号システムについて一通りのことは書いたかと思います。ようつべで前面展望を見るときにでも参考にしていただけたらいいかと。もちろん、TFやその他ゲームや模型でのシーナリーづくりにも。

とは言えH/Vは古いシステムで現在は主要路線からより高機能な(とはいえ、やっと日本の3灯式信号に追いついただけとも言える)Ksシステムに変更されつつありますし、写真には出ていた東ドイツのHlやベルリン・ハンブルクSバーンのSvシステムも使われています。これらとか、スイスやオーストリアの信号とか、あるいは標識類とか、需要とやる気があればまた書くかもしれません。

では今シリーズはここまでで。質問やツッコミお待ちしております。

ドイツの鉄道信号について(2)

 

2-1. 入換標識と車両停止標識

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写真はまたしてもコブレンツです。いちおう展示スペースから撮影してますが、完全に現役線とつながっている……

前回目立っていた「W」形の標識と黒い四角に円盤の入った信号?が写っています。別にしゃがんで撮っているわけではないので、かなり高いところに設置されているのが解ります。

どちらも入換作業で使われる標識で、W形のほうは車両停止標識Wartezeichenで、四角い方は機械式の入換標識Schutzsignal(Sperrsignal? どっちが正式なのかな)です。この二者はTFのMODでも一揃いで出ていますね。車両停止標識のほうは見たまま停止位置を表示しているだけなので、入換標識について主に見ていきます。

入換信号機と入換標識の日本での違いはぐぐるなりうぃきるなりしてもらうとして、入換信号機と訳さなかったのにはそのもの入換信号機Rangiersignalというものが別に存在したためです。

色灯式のものも併せて現示を見ていきましょう。

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停止・進入禁止

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停止

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進入禁止相殺

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入換走行を許可

 (ドイツ語版Wikipediaより転載)

両者で少し意味合いが異なります。恐らく機械式のほうは現場の担当者がすぐに現示を切り替えられるのに対して、色灯式のほうは遠隔操作されるからとかそういう理由だと思います。何れにせよ、進行せよという指示ではありません。そこが入換信号機ではないとする根拠でもあります。

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こちらはニュルンベルクで展示されている信号たち。一番左端が色灯式の入換標識の小人信号Zwergsignalです。

左から二番目はSバーンで用いられるSv信号、真ん中のものがH/V信号の色灯式信号機、その右は不明(追記:どうやらバイエルン時代の信号機です)、その手前は前回解説した機械式前置信号機で、一番右は主信号機それも三腕のものです。

2-2. 代用信号

写真の真ん中の色灯式信号機には一つの柱にいろいろついています。一番上の四角い背板に四つの灯火がついているのが主信号機、下の菱型っぽい八角形に四つの灯火がついているのが前置信号機です。そして真ん中は、事故の記事でも登場した代用信号Ersatzsignalです。

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(ドイツ語版Wikipediaより転載)

手信号代用機と同じようなものと紹介しましたが、本当に一緒といえるかはよくわかっていません。意味は主信号が停止信号を現示しているか、故障して何も表示していない場合にこの信号がついていれば通過できるということなので、使い方は手信号代用機と同じだと思っています。

色灯式のものしかないのも、多分機械式の時代には駅員が直接手信号を出していたからだと思います。なお現在は腕木式信号機に対してもこの代用信号だけ色灯式のものをつけているという例も多いようです。

2-3. 速度指示器

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ニュルンベルクの信号機たちその二。手前はH/V色灯式信号機の主信号に入換標識が一体化したもの、二番目は東ドイツで制定されたHl信号、奥は統一後の幹線で広まっているKs信号……だと思います。真っ黒でよく見えないけど。

H/Vの上には四角い箱状のものが乗っていて、Ksの上には三角形の板に「3」と書いてあります。これが速度指示器Geschwindigkeitsanzeigerです。

器って言っても板のほうはただの制限速度標識と変わらないんですが、箱状のものはLEDの灯列で数字が表示されます。こういうのも灯列式信号っていうんですかね?

数字はkm/hの10分の一で、3なら30km/hを意味します。20とか表示されることもあります。もしこれが先の線路状況の色んな要素を含めて表示されるなら完全にスピードシグナルなのですが、H/V信号との組み合わせの時は分岐器の速度制限を表示しているだけなので結局進路によって表示が変わる速度制限標識です。

前置信号機とともに設置される速度指示予告器Geschwindigkeitsvoranzeigerもあり、板のものは白い部分が黄色くなり形状も下向きの三角形に、灯列式のものはLEDが黄色になっています。これは色灯式信号機に対しては前置信号機の下に取り付けられます。機械式信号機に対しては速度指示器も予告器も信号機の下につくようです。というか上にはつけられないよね。

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キールからハンブルクに戻る間に車窓から撮ったもので、H/V信号の色灯式「コンパクト」信号機です。一番上に速度指示器が乗っています。

 

これでH/V信号機と一体化して設置されている信号や標識は一通り説明できたかと思います。次回は主信号機の年代別の種類(とはいえ写真でだいたい登場しましたが)と、現示の見方を説明したいと思います。

ドイツの鉄道信号について(1)

 

今回から多分三回シリーズでドイツの鉄道信号について書いていこうと思います。前々回書いた事故の話とはあまり関係ありません。まぁ一応つながりは出ますが。
もともとTF-Wikiのほうでドイツの鉄道信号について解説してくれと頼まれたのがきっかけではありますが、前から謎に思っていたので調べて書こうとしたら到底ゲームと関係ない話になりそうだったのでこのブログを作りました。
ただし全体像はあまりにも膨大になりすぎるので、やっぱりTFのMODに関わる部分について書いていくと思います。
日本語での先行情報は個人掲示板の過去ログか、個人ブログ一件に少しあったくらいしか見つけられていません。それどころかわからなくて困っている人の書き込みを幾つかみつけたので、多分ネット上で日本語では初めての内容になるんじゃないかな……と思っています。
基本的に日本の鉄道信号については知識が有ることが前提、写真やイラストは特記無き場合著者撮影・作成、自分で翻訳した単語は最初に原語を続けて書きます。

1.H/V信号システム

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写真はニュルンベルクのDB-Museumの別館前に展示されている機械式信号機Formsignaleです。奥にある背の高い方はいわゆる腕木式信号機で、出発・場内・閉塞といった防護区間を持つ主信号機Hauptsignalに使われます。これが停止現示なら列車は停止、進行現示なら列車は進行するのは万国共通ですね。なぜ腕木が二本あるのか? とかは後回しです。

注目して欲しいのはその手前にある背の低い(とはいえ、かなり巨大です)円形版の信号機。これがドイツ語圏の鉄道信号の特徴となる前置信号機Vorsignalです。HauptsignalとVorsignalが一対となって設置されることによって構成される信号システム、これをH/V信号システムH/V-Signalsystemと呼びます。1924年から使われ始めた、ドイツの鉄道信号を語る上で基本となるシステムです。

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(ドイツ語版Wikipediaより転載)
上図はこの二者が実際はどう配置されるかを示しています。列車は左から進行し、緑色の部分は通常のブレーキ距離、橙色の部分の余裕を加味して、例えば160km/hで走行する路線の場合は主信号機の1km手前に前置信号機が置かれるようです。

日本より高速運転で先んじていたドイツでは、信号の視認距離に入ってからブレーキを掛けても停止できなくなるという問題にも先にぶちあたりました。日本では同時期に600m条項を作って最高速度を抑えるという手段に出ましたが、H/V信号システムでは主信号機の現示を前置信号機が予告することにより、前置信号機の視認距離からブレーキをかければ主信号機の手前で停止できるという仕組みになっています。

ただしこれでは閉塞間隔を1kmやそれ以上にせねばならず、列車本数を増やしたかった日本とドイツとの鉄道事情の違いが際立っているとも言えます。

さて前置信号機などという訳語をひねり出したのはこれが日本のどの信号とも違う使い方をするからですが、非自動閉塞区間には存在する遠方信号機と通過信号機には似た点があるので、少し比較してみましょう。

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遠方信号機の場所には前置信号機だけ、場内信号機と通過信号機の場所には主信号機と前置信号機、出発信号機の場所には主信号機だけが設置されています。とはいえ、最初の前置信号機は日本の遠方信号機よりもかなり手前にあるはずです。また主信号機間の距離が先に示したブレーキ距離を下回っているような場合には、前置信号機はひとつ前の主信号機と一緒に建植されます。この場合別に速度制限をかけるんでしょうか。

日本の遠方信号機は場内信号機の現示を予告し、通過信号機は出発信号機の現示を予告しています。ドイツの前置信号機はどちらの役目も果たしています。遠方信号機が注意現示のときは場内信号機までの間に速度制限がかかるといった違いもあります。

このように、前置信号機は日本の遠方信号機より幅広い範囲で用いられ、場内と出発以外の閉塞信号機に対しても設置されていますし、もちろん自動閉塞の区間でも用いられています。

逆に日本の遠方信号機のことをドイツ語版のWikipediaではVorsignalとして紹介しているのですが、これは両者ともに含む概念である英語のdistant signalを経由して訳されたために起きた現象であり、同一視するべきではないと考えています。

ところで日本では場内停止、出発進行の場合通過信号機は注意現示ですけど、ドイツではどうなんでしょうね。前置信号機はあくまで主信号機の現示に連動するだけなので、場内停止で前置は進行予告という組み合わせもあるんじゃないかと思うんですが、確証はないです。

ちなみに見ての通りドイツの腕木式信号機は進行現示の時斜め上に腕木が上がり、日本とは逆になります。このほうが機構が壊れた際に自動で停止が現示されフェイルセーフです。日本のものも一応レンズ部分がカウンターウェイトになっていて自動で停止現示になるようになっています。

 

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写真は現役の腕木式信号機の様子。コブレンツのDB-Museumの敷地内から撮影です。この博物館、現役線までの間に柵も仕切りもなにもないんですよ。子供とか目を離してて大丈夫なのかな。

ドイツでは駅構内を中心に腕木式信号機が結構残っていて、別に更新する金がないわけではないと思うので(メンテナンスコストはむしろかかりますし)、恐らく絶対信号機と自動信号機を明示的に区別するためや、入換作業や駅テコ扱いなどの際に逆側からでも信号の現示を確認できるといった利点を重視して残されているんだと思います。

もちろんH/V信号システムは現役のシステムなので、色灯式信号機もあります。というかそれが本題なのですが、その前にこの写真でもやたら存在感のある「W」形の標識など、その他の信号や標識の話を次回はしていきたいと思います。

 

3/4 比較画像を修正(日本のまで右に腕木をつけてしまっていた……)

凪のあすから

二年前のアニメについて語るのもなんなのですが、友人にすすめるついでに一気見したら泣いてしまったもので。
一応リアルタイムでも見ていたのですが、最初は美術が綺麗な作品だなという感じで見ていました。それが途中から世界観に引きこまれ、人間ドラマに引きこまれ、最後は呆然としながら釘付けなっていた覚えがあります。
特に美海かわいい
世界観が突飛で印象的な作品というのは多々ありますが、それを不自然に感じさせない作品は珍しいと思います。深い青色の海と空が織りなす自然の風景を引き立てているのは、それに挑みせめぎ合ってどちらかと言うと負けている感じの人工物のディティールです。金属の錆び味や、剥げかけのタイル、廃線跡のトンネル。海沿いの田舎町にありがちな風景がリアルに、そして同時に空想的に描かれています。
故に美海かわいい
そして人間関係というか、社会のあり方がリアルなんですよね。海の住人が当たり前のようにいる社会。陸の人が海村には行けないから双方を行き来して暮らしているのは中学生だとか、出稼ぎしてる人だけとか。だからすぐとなりに住んでるのに妙な偏見があったりとか。対立したり、実は依存しあってたり。主人公たちは最初から二つの異なる社会を繋ぐ立ち位置にいるんですよね。
中でも美海かわいい
中学の先生とか、大学の教授とか、いい味出してます。色んな人がその人の狭い認識の中で考えて行動してるけどなんかずれてて、そんなこんなで人の描写がすごく丁寧で魅力的な作品です。
おっちゃんたちとか神様までみっともなくって人間味に溢れてて。お気に入りなのはちさきが肉料理を教授に出してるのに、教授は田舎料理を褒めるというシーン。信州の山奥でマグロの刺し身を出されてもてなされるなんて、あるあるですよね。
つまり美海かわいい
物語はノンストップで淀みなく進行していきます。これも考えてみると珍しいことで、26話を使って一つの物語をするアニメって実は珍しいんじゃないですかね。間にショートエピソードとか入らないんですよ。前後半は大きく流れが変わるので今時なら分割二クールにしてしまうかもしれませんが、恐らく三ヶ月なんて間が空いたら見ている方の焦燥が高まりすぎていたと思います。正月確か一週間だけの空きでしたが、それでもかなり引き込まれましたから。
だから美海かわいい
後半は人間って成長しているようでしてないのか、してないようでしているのか……そんな気分になります。気を回して大人ぶっている方が、より子供っぽくて傍から見ていると滑稽でもあり苛立たしくもあったり。
地上に居た人々にとっても、特に海村と関係の深い登場人物たちは、五年の時を止めていたのかもしれません。
そして時を止めたようでありながら五年分朽ちが進んだ街の風景が、その印象を深めます。少し全体の色合いも変わっている気がします。
成長した美海もかわいい
主題歌も四曲とも好きですが、特に後半EDの三つ葉の結びめの、イントロがフルで入っている回の入り方が大好きですね。今回見返して、フルで入ってない回の方がむしろ多いことに気づきました。
何れも透き通った声色の、透き通った音色の曲ですが前半OPが軽やかに明るい曲調、EDがしっとりという普通の構成なのに対して後半はOPがか細い印象で、EDが力強い印象を受けるのは作品全体の作風の変化を際立たせています。
OPEDの美海もかわいい
全体的に後半の評価が高い作品ですが、前半あってこそ後半の葛藤ですし、特に年末の最大の「転」までの静かな盛り上がり方はむしろこの作品を引き締めている要素だとおもいます。
オリジナルアニメだからできた世界観を完璧に描き上げ、二クール休みなくゆっくり丁寧なテンポで物語を語りきったこの作品。派手さはないけど名作中の名作だと思いますよ。
なんといっても、美海がかわいい

なんでこんなにかわいくてかしこくていちずでめんどうみのいい美海がむくわれないの? こんなのひどすぎるよ

ドイツ南部バート・アイブリングでの列車事故についてまとめ

 

すでに日本のメディアでも報じられている通り、2月9日朝、ドイツ南部ミュンヘンの南東30km、バート・アイプリング近くで列車衝突事故が発生、11人の方がお亡くなりになりました。彼らの安らかな眠りと、彼らの信じる教えによる救済のあらんことを異国の異教徒ながら願うばかりです。
さて、事故から2週間あまりが過ぎ、日本ではすっかり過去のニュースとなってしまった感がある件ですが、鉄道先進国における衝突事故などという事例はドイツびいき鉄ヲタな自分としては気になって仕方ないところ。そろそろ日本でもまとめ記事的な物が出ないかと期待していたのですが、今朝東洋経済に載せられた記事が東と西の区別もつかない体たらくであったことに落胆し、自分で書くことにしました。(普段、ジャーナル誌の連載は興味深く読ませて頂いているだけにどうしてこうなったという思いが強いです)
なお私は大学でドイツ語を勉強した以外は特に何者でもないので、とりあえずツッコミ待ちの状態で書いていくことにします。

1.事故現場と当該列車
ミュンヘンから南へ20kmほどのホルツキルヒェン(Holzkirchen)と、そこから東へさらに20kmほどのローゼンハイム(Rosenheim)を結ぶ通称Mangfalltalbahnが事故の起こった路線です。電化された単線路線で、ミュンヘン郊外の通勤通学路線としての顔がある一方、貨物列車も通過する亜幹線でもあるようです。
ぐぐるまっぷだとこの辺になります。
https://www.google.co.jp/maps/@47.8498043,12.0283998,16z?hl=ja
ところがぐぐるとドイツ政府が喧嘩している影響なのか、駅とかの情報が表示されてくれません。ので、書き加えるとこうなります。

 

 

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関連する駅は三つ、西からバート・アイプリング駅(Bad Aibling Bahnhof(27.8km) 以下アイプリング駅)、バート・アイプリング・クアパーク停留所(Haltepunkt Bad Aibling Kurpark(28.6km) 以下クアパーク停)、コルバーモール駅(Kolbermoor Bahnhof(33.0km))です。クアパーク停は2009年に開業したばかりの駅でした。
事故現場付近にカーブは二つありますが、道がなく救助隊が往来に難儀していたことを思うと東側のカーブです。西側のカーブには浄水場へと続く側道があります。ぐぐるあーすで測るとクアパーク停から1.6kmほど、コルバーモール駅から2.4kmほどの場所ということになりました。公式な距離表示との誤差はあるのですが、どちらにしろクアパーク停のほうが近い場所になります。
現場付近の前面展望動画がようつべにあります。
Führerstandsmitfahrt Holzkirchen-Rosenheim(事故現場は32分50秒)
https://www.youtube.com/watch?v=VsobYN4etCo
Führerstandsmitfahrt Rosenheim-Holzkirchen(事故現場は6分40秒)
https://www.youtube.com/watch?v=5vazpLHPB-w
これを見ながら配線と信号の配置を書いたものがこれになります。今回に直接関係しないと思うものは省いてあります。
 
 

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クアパーク停は棒線駅ですが閉塞信号が東方にあり、アイプリング駅とコルバーモール駅の間に二列車を入れることができるようになっています。もちろんこれは続行列車を入れるためのものであるはずです。
当該区間の時刻表は列車運行会社であるメリディアンのサイトより入手することができます。
http://www.der-meridian.de/uploads/meridian/documents/162/fahrplan-munchen-hbf-holzkirchen-rosenheim-13-12-2015-10-12-2016.pdf
事故を起こした列車の列車番号はこの記事中にあるように、ミュンヘン発(ホルツキルヒェン経由)ローゼンハイム行きメリディアン70505列車、ローゼンハイム発ホルツキルヒェン行きメリディアン70506列車です。
http://www.faz.net/aktuell/gesellschaft/ungluecke/zugunglueck-in-bad-aibling-es-laeuft-alles-auf-den-fahrdienstleiter-hinaus-14062343.html
しかし時刻表は事故後のものであるため、万国共通?の習慣に従い事故を起こした列車の列車番号は変更されています。前後の番号から推定できますが、70505列車は現在79597列車として、70506列車は79596列車として掲載されています。
関係する時刻を抜書きすると、こうなります。
        70505レ | 70506レ
アイプリング駅   6:38| 6:51
クアパーク停    ↓ 6:40| 6:48 ↑
コルバーモール駅  6:44| 6:45
両列車とも、当該区間は各駅停車でした。
 
2.事故の経過
こちらの記事がよくまとまっているので中間部分を訳していきます。
http://www.focus.de/regional/videos/bad-aibling-kolbermoor-holzkirchen-das-zugunglueck-von-bad-aibling-im-zeitstrahl_id_5289713.html
05:00 Uhr: Der Fahrdienstleiter nimmt seinen Dienst im Stellwerk auf
朝5時:運転指令(信号手?)は信号小屋で勤務を開始した。
Mehrere Züge passieren den Streckenabschnitt Heufeld-Bad Aibling – Kolbermoor ohne Komplikationen.
幾つかの列車がホイフェルト―バート・アイプリング―コルバーモール間の線路をもつれなく通過した。
06:10 Uhr: Meridian 79505 startet von Holzkirchen in Richtung Rosenheim.
6時10分:メリディアン79505(以下、505レ)がホルツキルヒェンローゼンハイムに向けて出発した。
06:37 Uhr: Der entgegenkommende Zug 79506 verlässt den Bahnhof Rosenheim und trifft pünktlich um 06:40 Uhr in Kolbermoor ein.
6時37分:接近する列車79506(同じくメリディアン。以下、506レ)がローゼンハイム駅を出発し、6時40分には時間通りにコルバーモールに到着した。
Hier hat dieser einen  fünfminütigen Aufenthalt, um die Kreuzung der Züge abzuwarten auf dem eingleisigen Streckenabschnitt zu ermöglichen.
ここでこれ(506レ)は5分間滞在し、単線区間を通過できるようになるのを待っていた。
Doch der Zug aus Richtung Holzkirchen hat eine etwa vierminütige Verspätung.
だが、ホルツキルヒェンから来る方向の列車(505レ)は約4分遅れていた。
06:45 Uhr: Nach einem Sondersignal des Fahrdienstleiters verlässt der Zug den Bahnhof Kolbermoor. Er erlaubte so einem der Züge die Weiterfahrt, obwohl eigentlich das Signal für diesen Zug auf Rot gestanden hätte.
6時45分:運転指令の特別信号(後述)の後、列車(506レ)はコルバーモールを出発した。彼(運転指令)は列車(複数)に進行の許可をだした、本当はこの列車(506レ)に対する信号は赤の状態であったにもかかわらず。
Der Fahrdienstleiter erkennt seinen Fehler und sendet ein Notsignal an die beiden Triebfahrzeugführer – diese bleiben aus bisher ungeklärten Ursachen wirkungslos.
運転指令は自身の過ちを知り非常信号を両方の運転士へ送った――不明な理由によりこれは功を奏さなかった。
06:47 Uhr: Die beiden Züge kollidieren bei Streckenkilometer 30,3 zwischen Bahnhof Kolbermoor und der Haltestelle Bad Aibling Kurpark. An der Unfallstelle beträgt die zulässige Geschwindigkeit 100 km/h.
6時47分:両列車はコルバーモール駅とバート・アイプリング・クアパーク停留所の間30.3キロ地点において衝突した。事故現場の制限速度は100km/hだった。
 
特別な信号というのは日本でもそのまま報じられ、どう特別なのか記者も理解しないまま流していた感があります。ちゃんと調べれば現地メディアではこれが"Zs1"という信号であったことが報じられています。
http://www.neues-deutschland.de/artikel/1002013.bad-aibling-war-fahrdienstleister-an-zugunfall-schuld.html
またこちらの記事でも「三つの白色灯火による点で示される信号」といった書き方で同じことが書いてあります。
http://www.faz.net/aktuell/gesellschaft/ungluecke/fahrdienstleiter-verantwortlich-fuer-zugunglueck-in-bad-aibling-14073284.html
これはErsatzsignalの一種です。
https://de.wikipedia.org/wiki/Ersatzsignal
信号が赤であっても、Zs1が表示されていれば列車は進行することができます。通常信号機故障や、本線上で停止した列車を救援する際などに使われる手信号代用機と同じ役割のものと思われます。
間違っても列車が遅れそうだからといって通過させるために表示するものではありません。
 
3.疑問点
Focus.deの記事には506レのタイムラインについては詳細に書いてありますが、505レのほうの動きは詳しく書いていません。そこでとりあえず4分遅れというのが正しいとして(記事によっては3~4分遅れという記述もあります)、505レの動きを追ってみるとこうなります。
6時42分:アイプリング駅を出発
6時44分:クアパーク停を出発
6時47分:衝突
どうでしょうか。こうみると、個人的には二つ疑問が浮かびます。
一つはアイプリング駅で勤務していた運転指令が、目の前で列車が出発していった線路にその3分後、対向列車を入線させている点。506レから対向列車が来ないという連絡を受けて信号機故障と思い込みZs1を表示させるのにそれほど時間がかからなかったとしても、すこし異常ではないでしょうか。
もう一つは事故現場がクアパーク停寄りであることから、505レがクアパーク停を出発するのは、コルバーモール駅から506レが出発した後ではないとおかしい点です。クアパーク停でさらに遅れが拡大したのか、あるいはただでさえ遅れていた505レが徐行運転をする何らかの未知の事情があったのかもしれませんが。
普通、赤信号を冒進したにせよ手信号代用機で進行したにせよ、506レがコルバーモール駅を出た時点で軌道回路が作動しクアパーク停東方の閉塞信号を停止現示にするはずです。そうでなければ、列車が駅をオーバーランしただけで正面衝突事故が起こりますからね。この昔ながらのシステムに何か穴があったか、あるいは505レも信号を無視したという可能性も浮上するわけです。
運転指令が訴追される見込みとなりこれで一件落着感が漂っているこの事故ですが、運転指令のミスが直接の引き金となったにせよヒューマンエラーをカバーするはずの機械が期待された働きをしなかったことや、上下分離方式によって信号手と運転士が違う組織に属しているということの風通しの悪さや定時運行へのプレッシャーといった人的問題がなかったかなど、もっと深く追究されていくべき事故だと思います。
遠い異国のことと片付けがちですが、日本だろうとヨーロッパだろうと鉄道システムの基本は同じ、民営化後コスト削減と安全の狭間で苦悩している事情も同じです。日本では去年JR九州JR四国で正面衝突一歩手前のインシデントが起こりました。前者は低速でのこともあり運転士の注意で避けられ、後者は安全側線という100年の実績あるシステムが(正直、21世紀になってまであんなものが役に立つなんて信じてませんでした)効果を発揮して事故を防ぎました。
真面目な鉄道員と確実に動作する機械、その両方があって鉄道の信頼性は保たれているのに、日本でも欧州でもどちらも年々崩れつつあると感じる今日このごろです。
 
P.S. 当記事はYahooブログに別名義で投稿したものの再掲です。別名義なのでリンクは貼りませんが、同じ内容のものがどこかにあったとしてもどちらがパクリとかそういうわけではないのであしからず
4分遅れを加味した時間を間違えていたので修正、それにしたがって内容も修正しました。論点は変わっていません。また翻訳を一部修正

久々にブログを作ってみた

 ども、狩谷といいます。海外向けにはkariyaとも書いてます。

最近TrainFever Wiki*のほうで記事を書かせていただきつつ、時々ゲームに関係ないことも書きたい欲求に駆られるのでブログを作ってみました。昔別の名義で作っていたブログはあるのですが、そっちはリアルの知り合いくらいしか見に来ないので。こっちは趣味全開な話題で展開する感じにしようと思います。

ただし、直接Train Feverに関する話題はWikiのほうで連載しているプレイリポートである「週刊MOD紹介」の中で取り上げると思うので、こっちではTFの話題はあまり出ないかも。

向こうは週刊と銘打っていますが、こっちは不定期更新なので一年放置されてても気にしないでください……