ドイツかぶれの徒然

英語が嫌いで気づいたらこうなっていた。思い出したように更新するただの生存報告になりつつある

星界の戦旗Ⅵ 読了

五年か。思ったより早かったな(錯乱
読者に遺伝子改造による長命を要求する小説として有名な、『星界の戦旗』の第六巻がついに発売されました!
……新刊チェックなんてしてないから、完全に乗り遅れたんですがね。ともかく、読了したので感想をば。もうシリーズ通読者は読んでるだろうってことでネタバレありです。

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淡々と戦争してます。すっかり冒険活劇から戦記物にジョブチェンジした感じですね。
特に焦点が戦略級の動きにあたっており、それを象徴することに艦長クラス以下は全員職名で呼ばれるというモブ扱い。今までの登場人物は多くが司令官及び参謀になっています。
私的にいいなぁと思ったのは、戦略レベルの戦争遂行における情報戦の重要性がわかる描写が多いこと多いこと。しかも、こういう点を扱った作戦はスパイモノになりがちなのに、強行偵察の現場が緻密に描写されています。もっとも、星界シリーズでスパイっていうものが成立するのかわかりませんが。
巡洋艦や巡航艦ではなく巡「察」艦という命名をしたシリーズ初期の頃から、偵察の意義は強調されてはいましたが、それでも今までの巡察艦の描写は攻撃的側面が強く、騎兵というより戦車のような扱いだったように思います。やっと巡察艦がなぜ巡航艦ではないのか、が描写されました。
もう一つ戦略レベルで戦争を縛るものは補給です。特に機雷の供給量と消費量に関わる描写は大変多かったですね。それでも奇襲の成立し得ない平面宇宙であるからこそ、補給線だけを狙い撃つような戦い方ができず、どこかで迎撃しうるのは戦争指導者にとって楽な面でしょう。いや、であるはずでした。
ラクファカールという場所は、そういう意味でもジョーカーだったんですよね。ラクファカールに配された戦力は、8つの門のどこへでもすぐ出現しうる。スキール門から「第二方面」を突く可能性もあるし、第一方面の他の三つの門からそれぞれの領域を刈り取りにくるかもしれない。それら全てに備える事はできないので、ウェスコー門だけをギリギリ守りつつという戦いになったわけで。
しかし統合体側としてもウェスコー門のすぐ近くにスポール艦隊がいるとラクファカールの部隊を動かすわけにもいかず、それが今巻において統合体軍の出番がなかった理由でしょう。
前巻に続き、ハッタリ役として全力で仕事したレトパーニュ大公爵なのでした。

 

さて、この五年間すっかりグレーリア押しとなった私としては、過激な青年(乙女)将校となったレクシュ・ウェフ=ローベル・グレーリア十翔長に萌え萌えでございます。
星界軍が縁故主義とは無縁な組織でよかったですね。司令長官の従妹が会議の席で過激意見を出したとなると、下手したら演技で観測気球を上げたとみなされかねませんから。しかも、その意見は司令長官の意見とそう遠くないのときますし。
それにしてもグノムボシュと対になって行動する場面がほとんどだったのが気になります。この二人、好い仲なのでしょうか?
とりあえず、グレーリアかわいいよグレーリア。
エクリュアは相変わらずセリフが少ないですが、補給戦で大活躍。コミュ力を要求される仕事が多かったように思われましたが、「イエスかノーか」のようなゴリ押し交渉は得意なのかもしれません。スポールさんから機雷分捕ってくるほどですし。それに最後、皇帝に対して意見具申する役まで任せられ、しかもそれなりに成功した様子。
しかも臨時ながら分艦隊の指揮官までやってしまう。突撃艦でも仕事していた彼女ですが、上級指揮官としては戦列艦部隊のほうが似合っているのかもしれません
ともあれ、エクリュアかわいいよエクリュア。

 

もう一つ思ったのは、AIなしのSFはありえない時代になってしまったためなのか、今作でもAIが登場します。思い返してみると、人類統合体は操艦を機械任せにしているという設定が前からあったのですから、実はAIに支配されている既存人類国家と、見方によっては生体コンピューターネットワークであるアーヴとの対立構図とも見れるのです。
刊行開始から22年になるこのシリーズですが、まだまだSFとしても色あせてないな、と思うのでした。(航空宇宙軍史ほどじゃないしダイジョーブダイジョーブ)
さて、次巻の発表と長寿化技術の開発はどっちが早いんでしょうか?