ドイツかぶれの徒然

英語が嫌いで気づいたらこうなっていた。思い出したように更新するただの生存報告になりつつある

そろそろ火星に行きたいな

C:Sに引き続きStellarisにド嵌りしてしまい、すっかりスウェーデンかぶれに転向しつつある狩谷です。(※といいつつ、C:Sはフィンランド製です)

 

その御蔭とはやぶさ帰還7周年とかがあって、最近有人火星探査計画に興味を持って色々調べていました。

図書館でまともそうな本としてサイエンスZEROでおなじみの竹内先生などが書かれた「人類が火星に移住する日」と、二番目に月に降り立った男バス・オルドリンの「ミッション・トゥ・マーズ」(同名の映画ではありません)を読んでかなりいろいろなアイデアにうなりましたが、ふと気づいたのです。

あれ、どっちにも「どうやって火星に着陸し、離陸するのか」が書いてないな。

コズミック・フロントとかで見る火星探査のイメージ映像だと、着陸船がロケット噴射をしながら降下してきて、離陸するときもそのまま離陸していったりするわけですが、ことがそんなに単純なわけはない。

アポロ月着陸船ですら降下段10トンに対して上昇段4.5トン、つまり降りていくときの三分の一だけが飛び上がったわけです。火星は月よりも大きいので、この割合はもっと小さくなります。

具体的には月の第一宇宙速度が1.68km/sなのに対して、火星は3.551km/s。地球はよく知らている通り7.9km/sなので、火星は月と地球の中間よりちょっと小さいぐらいですね。

これでツィオルコフスキーの公式を使って必要な燃料と積荷その他の重量比を求めますと(参考:「われらの有人宇宙船」p.59)、とりあえず比推力を300秒として月からの離陸には全体の43%を燃料とする必要があるのに対して、火星からは70%ほどを燃料にする必要があります。

なお、地球ではこの数字は9割くらいですが重力と空気抵抗のことを考えると一段式では軌道に乗れないので、二段式ロケットを使うのは御存知の通り。となると、火星から単段で打ち上げるためにもより多くの燃料が必要となることが容易に想像されます。

で、アポロ同様に着陸時もロケット噴射だけで行くなら同じだけの割合の燃料が必要になるわけです。つまり、1トンのもの(機体と人と荷物ひっくるめて)を火星に着陸させて火星周回軌道に打ち上げるには、10トンかそれ以上程度の燃料を一緒に持っていってやらねばならないわけで、地球から打ち上げるロケットと割合的に変わらないレベルになります。

もちろんそれを地球から運んでいく燃料もたくさん必要になってと雪だるま式に計画全体の規模がでかくなるわけですから、かなり非現実的ですね。

 

とはいえ、これを克服するアイデアもいくつかあるようです。一つは減速に火星大気を用いるやり方で、近年のNASAの火星着陸機はもれなくこの方法で行っています。以前はエアバッグみたいなのを最後に展開して跳ね返りながらゴロゴロ転がっていき、最近のキュリオシティの着陸では、最後にケーブルで吊るして着陸させるという新技まで繰り出してきたのですが、こういうトリッキーなやり方を有人宇宙船にも使うつもりなんでしょうか。

もう一つは離陸時の燃料を現地調達するというもので、90年台から提唱されているようです(マーズ・ダイレクト - Wikipedia)。NASAでもメタン燃料を使ったロケットの実験をしているので、この案に則った計画も視野に入れているのでしょうが、燃料生成プラントの重さが燃料全部持っていくよりは軽くなるのが前提になるだろうなぁとは思います(原子炉は絶対無理でしょう)。

更に素人でも考えつく手として、地球と同じように多段式ロケットを使ってやれば重量削減になるでしょうし、赤道から打ち上げてやれば毎秒240mほどお得に打ち上げができます。

結局、火星に行く計画ともなると壮大で余裕を持たせてあるイメージがありましたが、爪に火を灯すような工夫を積み重ねることになりそうですね。

 

それよか、トランプは宇宙開発を推進する気があるのかないのか、メイクアメリカグレートアゲインじゃなかったのかよ。