ドイツかぶれの徒然

英語が嫌いで気づいたらこうなっていた。思い出したように更新するただの生存報告になりつつある

ドイツの鉄道信号について(3・終)

3-1. 機械式信号機

鉄道信号機としては初期に開発されたもので、日本ではもう風前の灯しびですがドイツでは割と残っているのは前々回言及したとおり。

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(Hauptsignal – Wikipedia)

左が停止Halt!、真ん中が進行Fahrtです。では右は?

これはゆっくりしていってね緩速進行Langsamfahrtですが、これを日本の注意現示と混同するべきではありません。なぜならH/V信号の場合(Hl,Ksは異なる)、この現示は分岐の手前にある信号機で、分岐側が開通している場合のみに現示されるからです。

もともとプロイセン邦有鉄道の信号機を元にしている国営鉄道の信号機ですが、Eisenbahn-Signalordnung von 1907という個人サイトに載っているプロイセン時代の信号ルールだと二腕の信号機のどちらも斜め上に上がっているのは「分岐側に進行」という意味になっています。なお三腕だと「違う分岐側に進行」……三線以上に分かれる時に制限速度の低い方を表すのかな? 夜間灯火が全部緑色なのも興味深いですね。現在は二腕で下の腕木が上がっているときは黄色灯火です。

日本だと分岐の手前には分岐元×分岐先の数だけ信号機が並べられているのが基本ですが、ドイツだと分岐元の数だけです。それに加えて分岐先の速度を示しているように見えるのでスピードシグナルのように見えますが、元々制限は示していません。プロイセン時代の二本目の腕は進路表示器のようなものだといえます。

では現在はどうなのか? というと緩速進行現示だけなら40km/h制限がかかります。が、前回紹介した速度指示器が付属している場合そちらの現示が優先です。日本では60km/hの速度制限標識と45km/hの注意現示があったら45km/hで運転ですが、ドイツでは速度指示器が8を現示しているなら80km/hで、16を現示していれば160km/hで分岐器を通過します(そんなにいい分岐器はめったにないだろうけど)。

ですから言い換えるなら、緩速進行現示は分岐側へ進行できるという進路のみを意味しており、その制限速度は速度指示器に指示されているものに従う、標準的な40km/h制限の場合は速度指示器の設置を省略可、となると思います。故に、H/V信号システムはルートシグナルであると私は考えています。

前置信号機も見てみましょう。

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(Vorsignal – Wikipedia)

それぞれ、停止予期Halt erwarten、進行予期Fahrt erwarten、緩速進行予期Langsamfahrt erwartenです。

主信号機ともども、分岐がないところに設置されるものは緩速進行の現示をする必要がないので、主信号機は一腕のものを、前置信号機は円形板のみのものを設置することになっています。しかし分岐しないところの機械式信号機は早々に姿を消したと思われるので、ドイツの腕木式信号機といえば腕二つ、というのは向こうの鉄界隈でも強いイメージのようですね。

3-2. 色灯式信号機

1935年に最初の形の色灯式信号機は制式化されたようですが、普及は戦後を待つ必要がありました。

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(H/V-Signalsystem – Wikipedia)

上段の大きい四角のほうが主信号機です。駅周辺の信号機には併置されている入換標識が下にひっついています。

一番左は全点灯、左から停止、進行、緩速進行、入換許可です。左上の赤は何に使うんだろう?

ちなみ分岐のない閉塞信号機の場合は同じ大きさの背板に左下に赤・右下に緑の二つの灯火だけがある信号機を使ったようです。

さて駅周辺の信号には必ずと言っていいほど入換標識があるのだから、一つの機械にまとめてしまえというのが下段です。他にも停止信号が横二つ並びになり、腕木式信号機と同じようになっている上どちらかが破損しても大丈夫になっているのが特徴ですね。

このスタイルは50年代後期には登場していたようですが、後に緑色と黄色の灯火が左端にずれた形のものが69年規格製造形式Einheitsbauform 69として登場しました。

さらにコンパクト信号Kompaktsignalというスタイルのものもあり、現在更新中っぽいです。それがこち

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(H/V-Signalsystem – Wikipedia)

左は主信号と代用信号、中央は主信号と入換標識と代用信号が一つの背板に収まっています。右は前置中継信号機Vorsignalwiederholerで、左上の白灯を消せば前置信号機になります。どうやら主信号機に対して中継信号機を設けるという習慣はないようですね。

(2017.6.29追記:Vorsignalの中継器というネーミングではありますが、日本における主信号に対する中継信号機と同様の役割のようです)

 

これでH/V信号システムについて一通りのことは書いたかと思います。ようつべで前面展望を見るときにでも参考にしていただけたらいいかと。もちろん、TFやその他ゲームや模型でのシーナリーづくりにも。

とは言えH/Vは古いシステムで現在は主要路線からより高機能な(とはいえ、やっと日本の3灯式信号に追いついただけとも言える)Ksシステムに変更されつつありますし、写真には出ていた東ドイツのHlやベルリン・ハンブルクSバーンのSvシステムも使われています。これらとか、スイスやオーストリアの信号とか、あるいは標識類とか、需要とやる気があればまた書くかもしれません。

では今シリーズはここまでで。質問やツッコミお待ちしております。